君はあの時、勇者だったね
恐らく日記をいくつか書く日になると思うので、そのいちとしました。私の日記なので、何回更新してもいい。そういう場所を自分で作った、秘密基地みたいなものですね。
友人とゲームをして遊び終わってヘッドホンを外したそのコンマ5秒から、私は思考に耽る様になる。切り替えがここまで早い人間なのに、肝心な所のスイッチは全部動かない気がしています。取り敢えずシャワーが流れっぱなしだったらしく、水滴の音が静かにするので栓をしました。
敵を倒して、金を奪う。家具を壊して、物を奪う。そうしてあなたは強くなる。
強くなった先に最後のボスがいる。倒して、変化して、それでも倒す。帰れば祝杯があがっている。
いつしかあなたは背が高くなって、1番小さい鉄棒をくぐるのが難しくなった。代わりに家の塀から道路を覗けるようになった。目も悪くなった。
画家のモネは後世白内障だったなんて言う様に、目が悪くなって見えるものがある事に気がついた。敵の事を知った。何気無く倒した敵の後ろには、私と同じ生物の繋がりがたくさん広がっている。
武器を落としてしまった。殺さなきゃ殺されちゃうのにね。でもそのままでいいのかもしれない。自分と同じ痛みを持った人間を殺すくらいなら、ずっと。
そうして振り回さない剣を鞘にしまったまま数年を過ごしている。錆び付いたからもう取り出せもしなくて、鈍器にすらなりやしない。
乗っ取って 僕を乗っ取って 身体はいらないから
三代怨霊とかなんとかが本当にいるのなら、身体を譲り渡してもいいのかもしれない。
夕飯はなんだっけ、今日は何をしてたっけ。
赦されたいという気持ちがずっとあるというのは先日の日記で話しましたが、そんな物は溜まっていくのに肝心な物はいつでもすり抜けていく。
「底の抜けた柄杓で水を呑んでいる」と尾崎放哉は言いましたが、まさしくその様に、飲んでも満たされない。何かが欠落している。得体の知れない不吉な塊で塞ぐにも、ずいぶんとちぐはぐです。
つまらないのは社会のせいでも他人のせいでもなんでもなく、ただあなたが大人になってしまっただけなんだ。それを子供と笑う人がいるかもしれないけど、見ないふりをする事が得意になるのが大人なんだったら、あの時あなたが画面で見ていた大人とは随分違うじゃないか。
村も町もとっくの昔に壊れて皆死んじゃってるだけで、僕たちは今でも、勇者なんだと思う。
そうじゃないと苦しいじゃないか。