師匠も走る忙しさだし俺は常に走って逃げている。
年末がなんだ、という生活をしているが、日付けとして年の瀬が近づく程に、何かもわからない物に追われていく感覚が増していく。後ろ髪がちりちりと焦げつくようなこれが酷く嫌いで、イヤホンの音量を最大まで上げた。
走って逃げている。
手が荒れていた。焦燥感は寒さからだろうか。
うだる夏は、僕が勝手に頭がおかしくなって炎天下の中で幸せな白日夢を見てケタケタと笑い転げるだけだが、寒さはそうもいかない。どこまでも一人という現実を突きつけて、寒さで朝の5時に起きる生活が続いたので、アラームの30分前にエアコンをつけるようにした。
他者との繋がりを温もりと感じているから、この寒さをどこまでも一人という感覚に至らせる。電車のグリーン席に座る老婆に手を振る子どもたち。
「おばあちゃんバイバイ」と喋るそれらを横目で見て、改札へ上がった。
走って逃げている。